Balance 其の壱

2021年10月23日

balance:バランス

1.釣り合い。均衡。調和。

2.収支、貸借の釣り合い。


人間は、バランスをきちんと取れている時、安心する生き物である。

二本の足で立っているときは安定し、バランスを取るのに労を要しない。人間は安心する。

片足だけで立っているときは不安定であり、バランスを取るのに苦労する。人間は不安になる。

静止している時ですらバランスが取れていないと不安になってしまう。

では動いている時のことを考えてみよう。

歩くためには、片足を地面から離さなければならない。片足で立つ不安定な時間が必ず生じる。

歩くという動作は、安定と不安定を繰り返す動作である。

平らで舗装された道路を歩くときは、不安定さがもたらす不安は少ないだろう。

傾斜した舗装されていない道路を歩くとき、平らでも凍ってしまった道路を歩くときは、不安定さがもたらす不安は増していく。

歩くときは、平坦で舗装された道を選んで歩くようになっていく。

ここに落とし穴が生じる。人生において静止している時間は寝ているとき等3分の1に過ぎない。

残り3分の2は動いている時間である。

経験が無いときは、何をやるにしろ、不安が伴う。だから、いろいろなことに挑戦することを厭わない。

経験を積んでくると、安心できる方法を見つける。安心できる方法に頼って、別の方法を試すことや新しいことに身につけることを、めんどくさがるようになる。

社会のルールが変わったり、新しい技術が出てきたときに、経験者のほうが対応できないということが起こる。動いているのだが、安心できる方法にのみ拘っているから、実質、常に止まっていた。新しいことに挑戦する術をわすれてしまい、新しいことを前にすると固まってしまう。巷でよく聞く、『あなたは思考停止状態だ』とは、このようなことをいうのであろう。



仏教の世界観は、諸行無常。世の中は常に変化している。形が定まることは無い。と説く。

安定することのない世の中で人生を送るのであるから、勇気を奮って、不安定に怯えずに、前に前に足を進めろという教えである。勇気の供給源は、信心であることは間違いない。

常にバランスするために、安定と不安定を繰り返すことが必要であるのなら、一歩踏み出す勇気だけは持ち続けなければならないだろう。