道徳と商業を一致させる
2022年02月13日
渋沢栄一氏が、第一銀行の行員に訓示した内容の要約。
銀行業務は算盤勘定が主務である。→大いに算盤勘定に熟達すべし。
算盤勘定にばかり夢中になる。→人の道に反することをしかねない。
人の道に反しないように心がける。→道徳の本(渋沢氏は論語を推奨)を常に読みべし。
道徳と商業は反するものではない。
道徳と商業を一致させることが商売繁盛の基盤であるということを深く強調しています。
渋沢栄一氏が、論語を強調したのは、採用した行員の大半が武士階級出身者だったからだと、私は思います。武士階級ならば、子供のころに論語を学んでいますから、道徳本として適していたのでしょう。
商人出身者には、江戸時代から、この考え方はしみ込んでいます。
豪商や大店は1700年代には家ごとに家訓を定めていました。
豪商や大店に丁稚奉公に入ったことがある商人は、自分が若いころに勤めた店の家訓を参考にして、開業した自分の店の家訓を作っていたようです。のれん分けをしてもらった方は、本店の家訓がそのまま取り入れられたでしょう。
商人の家訓の共通項は次のようなものです。
1.年忌祭日供養はしっかりやる。:ご先祖様に感謝しましょう。
2.ケチを禁ずる。:中途半端なことはするな!
3.贅沢はするな。:分相応な暮らしを心がける。
4.度を過ごすな:なにごともやり過ぎは毒になる。
5.我慢が必要:無益な争いは避けましょう。
6.従業員の使い方は柔軟に:従業員の気持ちをよく理解して使いましょう。
7.目先の利益に走るな:本業を第一に考えましょう。
実業に基づき定められた家訓ですから、単純にして明快です。
できない理想論(論語)よりも、できる実学(商家の家訓)のほうが、私は上だと思います。